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第510回●2012年9月30日(日)

 「言葉遣い雑感」 

 先週 言葉遣いで、「ちょっと これは…」と思う経験を立て続けにしました。
3つのケースをお話ししたいと思います。

 @最近できたあるクリニックに電話しました。ネットでも評判の良いところでした。
電話をかけると女性職員さんが出たのですが、その言葉遣いに違和感を覚えました。
「では、予約を取ってください。」
など、「〜してください」のオンパレードだったのです。

「〜してください」は命令形の言い方です。上から目線を感じる言葉と言っても良いでしょう。

決してぶっきらぼうな言い方ではなかったのですが、最後に電話を切る時にも自分が先に切っていました。
患者さん(お客さま)が切られてから受話器を置くのが、接遇の基本なのですが…。
「ああ、ここは接遇をきちんと教えていないんだな」と思って、ガッカリしてしまいました。
大切にされていない感じがしたのです。

 Aあるところでサービスを受ける時、社員さんが「では、〜してくださいねー。」をお客さまに連発していました。
最初は特に何も思わなかったのですが、何回も言われていると次第に違和感を覚えるようになりました。
なぜだろう?と考えていて、思い当たりました。

 社員さんは「〜してください」はきつい言い方なので、それに親近感を表す「ね」を付けて和らげていたのでしょう。
しかし、命令形の言葉に親近感の表現を付けても、残念ながら丁寧さは感じられません。
たとえて言えば幼児や高齢者に話すようで、対等な大人として扱ってもらえてない感じがしました。
語尾を伸ばした言い方も影響し、こちらを軽く見ているの?と感じられたのです。

 もちろん相手の方にそんな意図は微塵もないのでしょうが、そう「感じられてしまう」のが恐いところだなあと思いました。親しい仲なら良いでしょうが、そうでなければ押しつけがましく聞こえ、知らないうちに、こちらに不快感を与えてしまっているのです。「〜して頂けますか?」や「〜してもらえませんか?」という、相手を尊重した言葉なら良かったのにと、残念でした。

(丁寧な言葉を話すと距離感ができる、と信じている方もいらっしゃるでしょうが、
 心理的距離感を作るのは、実は言葉遣いよりも表情が重要。笑顔がないとそうなります。)


 B最後に、これらとは対照的な事例です。
ある地域の介護事業所に電話した時、責任者の方はご不在でした。若い(と思われる)男性の職員さんが、
「私でよろしければお伺いしますが」と対応してくださいました。
 しかしご本人でないとわからないことでしたのでその旨をお伝えし、
「何時頃にお帰りになりますか?」と伺うと、
「4時前には戻ると思います」ということでしたので、その時間にお電話をお願いしました。

 すると5分ほどでその職員さんからお電話があり、
「申し訳ございません。確認しましたところ、 予定が変わり◯◯は4時には戻れないということでした。」
とおっしゃったのです。 私はその日、夕方から研修がありましたのでご連絡頂いて助かりました。
「では〜と〜をお伝えください。それから…」と少しややこしい話をすると、
「では、確認させて頂きます。」とポイントをテキパキと復唱してくださるのです。感心しました。

 一般企業とは異なる福祉関係の事業所で、ここまで丁寧にしっかりした対応をして頂けたことに驚きました。まだ若い職員さんのようでしたが、思わず「どんな職員さんなのか、お目にかかってみたい!」と思わずにはいられませんでした。同時に、責任者の方のきちんとした教育ぶりが伺え、その事業所に対して信頼感を持ちました。

 こういうことが、組織の運営の質を知る手がかりになることを 改めて感じました。単なる言葉だけの問題ではありません。相手の都合を考え、思いやり、丁寧に応対する。予想外の事態には機敏に対応する。抜かりがないように、気をつける。そうした現場での生の対応が、百の経営理念よりも具体的な誠意として伝わったのでした。


 

 

 
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