商品で山のようなカートを引っ張って買い物中、声をかけられました。
「すみません。奥さんは近くにお住まいですか?」
そうおっしゃったのは、年の頃は60代くらいでしょうか、明るい印象の女性でした。
私は、「はい、そうです。◯◯町です。」と答えました。
「いやー、山のように紙オムツを買っておいでるので。」と答えられ、
正直、私はなぜ声をかけられたのかわからなくてちょっと戸惑いました。
「実は私ね、主人が脳梗塞で 倒れて、介護をしてたんですよ。もう亡くなりましたけど」
その女性は笑顔でさらっと、そうおっしゃったのです。
私は何と言っていいかわからず、「それは大変でしたね…」と答え、
「私の所は、子供の介護なんです。」とお話ししました。すると、
「実は主人の紙オムツがまだ残っているんですけど、もし良かったらお使いになりませんか?」
思いがけない話の展開になりました。
「え!?…よろしいんですか?」
「こんなに山のように買う人を久しぶりに見かけて。(笑)私もそうやったので、ちょっと懐かしくてね。
もう母も亡くなったので、次に使うのは私ですけど、まだ先だから 」
とても優しい笑顔でした。
サイズも同じということで話はトントン拍子にまとまり、すぐその方のお宅に伺ってオムツを頂くことになりました。
急いで手土産の洋菓子を買って、教えられた道を急ぎます。
玄関を入ると、うずたかく積まれた紙オムツの山があり、びっくり!
お礼を申し上げて、車に積み込んでいきます。
「これでやっと、押し入れが片付きます。なんか捨てるに捨てられなくってねえ…」
「わかります。」
笑顔でやりとりをし手土産をお渡しすると、「じゃあ、お元気でね」 と見送って下さいました。
紙オムツがくれた、一期一会のご縁でした。
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