私が注目したのはそれに関連したニュースです。
多くのサポーターが集まり歓喜に湧く渋谷駅前のスクランブル交差点で、ある警察官が秀逸な話術で暴走しそうな群衆にマナーを呼びかけ、逮捕者やけが人が出なかったことです。
世界的にサッカーの大きな大会では群衆が興奮して暴動に発展することが多く(フーリガンとして有名ですね)、日本でもこれまでにトラブルが相次いだことから、渋谷駅前のスクランブル交差点周辺2キロでは、警視庁が歩行者の立ち入りを時間制限し、群集を誘導する警察官も多数投入しました。
そこで興奮してごった返す群衆に向けたお巡りさんのマイクパフォーマンスが優しくて粋だったため、ツイッターなどで「すばらしいパフォーマンスだ!」と賞賛の嵐が起き、動画も投稿され、一夜で「DJポリス」というニックネームまでもらうことに。
ニュース番組でもかなり流されたので、みなさんもご存じではと思います。(YOU TUBEにも動画があります)
彼の発言をニュースより拾ってみました。
・日本はフェアプレーのチームです。みなさんもどうか、交通ルールを守ってください。
・サポーターのみなさんは12番目の選手でもあります。12番目の選手のみなさん、ルールとマナーを守ってフェアプレーで今日の喜びを分かち合いましょう。
・警備に当たっているこの暗い顔をしたおまわりさんも、みなさんと気持ちは同じです。いいですかみなさん、みなさんのチームメイトなんです、おまわりさんも。チームメイトの言う事を聞いてください!お願いします。
・こんないい日におまわりさんも怒りたくはありません。お互い、気持ち良く今日という日をお祝いできるように、ルールとマナーを守りましょう。
このアナウンスに魅了され、周囲の群衆からは「おまわりさんコール」まで出る事態に。
・みなさん、ご声援ありがとうございます。ご声援も嬉しいですけどね、みなさんが歩道に上がってくれる方が嬉しいです。
・おまわりさんからイエローカードが出る前に、歩道に上がりましょう。
・みなさんが怪我をしてしまってはせっかくのワールドカップ出場も後味の悪いものになってしまいます。
・おまわりさんも心の中ではワールドカップ出場を喜んでいるんです。さあ
みなさん手を上げて、
横断歩道をわたれますかー?
驚いたことに、これに「ハーイ!」と素直に答えた人が多かったそうです。ノリがいいと言いますか。(笑)
それにしてもうまい!!あのトップ司会者のみのもんたさんも、絶賛していたほどです。
何がうまいって、興奮した群集心理をよくわかっていて、今までの警察の高圧的な命令口調ではなく、同格の仲間意識を喚起し、時に下からの「お願い」スタンスであったこと。そしてサッカーになぞらえたユーモアを交えることで、興奮した雰囲気を笑いに変え、和ませたことでしょう。逮捕者やけが人が出なかったことの大きな要因だと思います。
「おまわりさん」は蔑称という意見もありますが、あえて「警察官」という堅い言い方ではなく、「おまわりさん」という
やわらかい言い方を選んだことで親近感を高めたのも、良かったと思います。
あまりに秀逸なこのアナウンスに、ネットでは
「日本が世界に誇るべきもう一つのサムライブルーは、強くて優しい『おまわりさん』だ」とか、
「警官じゃなく、コミケの人じゃないか?」という感想まで出たほど。
(もちろん、そうではなく 第9機動隊の20代の隊員だそうです)
コミケとは「コミックマーケット」のことで、世界最大規模の同人誌即売会です。参加者数はなんと2009年には3日間でのべ56万人にも上った(!)そうです。当然、誘導も安全に行うのは大変でしょう。私も知らなかったのですがここのアナウンスも秀逸だそうで、まとめてみました。
・辛い事があっても立ち止まらないでください!
・みなさーん、ここで倒れてはまったく意味がありません。みなさんは買い物に来たはずです。会場に入ることが目的ではありません!
・館内では、お・か・ゆを守ってください!おさない!かけない!夢をあきらめない!
・お友達とはぐれてしまった方、再び会うのは絶望的です!最初からいなかったものと見なして下さい!そうすれば気が楽です!
・みなさん前を向いて下さい!普段は後ろ向きに生きていても、今日ばかりは前を向いていきましょう!
なるほど、確かに似ています。(笑)ここもすごい人で、何か起きればパニックになる危険性大なのを、うまくアナウンスでなだめているんですね。私も今回、非常に勉強になりました。
それにしても、こういう対応をしているのは世界でも類がないのではないでしょうか。
「ルールとマナーを守って」とユーモアを交えて呼びかける、こういう方々を「マナーサポーター」と呼びたいです。
マナーを守り、平和的に解決する。こういうことこそがクールジャパン(カッコいい日本)だと思います。
実はこうした素晴らしい人たちや文化こそが、日本が世界に誇れるコンテンツではないかと思うのでした。
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