常識にとらわれるといえば、ふとこういうことを思いだしました。
長女が中3の頃のことです。マンツーマンの国語の授業中、先生とたまたま「“ありがとう”は言うもの?言わされるもの?」という論争になったということでした。先生の「“ありがとう”は言うべきものだ」という指導に対し、娘は「違う。言わされるものだ」と最後まで反論し、そのディベートで授業時間が終わってしまった、というものでした。私はこれを知り、深く考えさせられました。
というのも日常の中で障害児は人にお世話になることが多く、彼女にお礼の言葉を強要することも多かったからです。人に何かしていただいたとき、すぐ言葉が出ないのは障害児の特性でもあるのですが、ゆっくりと待てなくて、「ほら、お礼は?」などと、せかせることが家庭でも学校でも見られていたからです。そういった繰り返しの中で、彼女にはお礼は言うものではなく、言わされるもの、という認識ができてしまったのではないか?と思えたのです。私は大いに反省しました。
もっとも彼女に「“ありがとう”は言わされるものだと思う?」と聞いてみると、やはり悪かったと思っていたのか「ありがとう、って言わんといかんと思う…」とポロポロ泣いたので、一安心したのですが。
つい先日、このことを思い出し、「“ありがとう“って言葉をどう思う?」と長女に改めて聞いたら、「いい言葉だと思う」という返事がすぐ返ってきました。ああ、ちゃんと成長しているんだな、と思わず笑顔になったことでした。