「最近の中学生はどういうものを読むのかな?」と、軽い気持ちでパラパラとめくってみました。目次には「環境」「情報」「スキル」「進路」「社会性」「国際理解」「福祉」など、色々な項目があります。ふむふむ。それぞれ3〜6ページほどの文章が35掲載されていますが、写真やイラストもあり興味を持ち読みやすいな、という印象でした。
最初は「環境」です。「マータイさんといっしょに私たちの地球を考えよう」。マータイさん?はて。でも、読み進めるうちに「そうか!」とわかりました。環境保護活動でノーベル平和賞を受賞し、「もったいない」という日本語の素晴らしさに感動したというケニアの環境副大臣の女性です。ニュースでも取り上げられていましたよね。
この他にも「伝統を作る、守る」三味線の吉田兄弟の自伝からの抜粋、「チェーンメール、あなたならどうする?」という考えさせるケーススタディー、「なぜ、人は恋するんだろう?」という相談に対する様々な答え、お年寄りに席を譲る時の複雑な心理を描いた玖保キリコさんのマンガ「いまどきのこども」までさまざまで、実にバラエティーに富んだ良質の読み物になっていました。
あちこちと読み進めていくうち、私は不覚にも何度か目頭を熱くしてしまいました。原爆で家族を亡くした悲惨さを淡々と綴る「ヒロシマの空」、夜間中学を舞台にした映画「学校」の一場面より「幸福って、なんだろう」、わずか4歳で亡くなった心臓病の妹を書いた作文「僕の妹 雅子」…。年を取ると涙もろくなっていけません。つくづく、教室でみんなと読んでるんじゃなくて良かった。
しかし、生きる上で ものすごく大切なエッセンスが、ここには惜しげもなくふんだんに使われている。とても豊かな本だと思いました。
実は私は「高知県人権学習研修マニュアル作成委員会」の委員をさせて頂いています。人権に関する様々な課題や読み物を載せ、各地で研修会のタネ本として使って頂くための物です。これまでに委員会ではマニュアルを「同和問題」「女性の人権」「高齢者の人権」「障害者の人権」「外国人の人権」「子供の人権」…など、3冊作成しています。1冊を1年間かけて作成していきますが、やはり内容の選定、展開の仕方など相当な時間と討議を重ねて作り上げていきますので、この道徳の教科書を作成する上でも、どれだけ大変でいらっしゃっただろうか、が少しはわかります。
ちなみに 私の文章のタイトルは「生まれてきて良かった」。 このコラムでも「足跡シリーズ」で書いたことのある、小学3年生の時の涼歌の言葉です。
「長女が生まれてから、『人間にとって、何が一番大切なことか』という、非常に根元的な問いを幾度となく考えるようになりました。…」(150回目にその内容を書いています。)
車いすの女の子がかわいらしく踊る姿が描かれ、それを優しく見守るお母さんのイラストに、「美化しすぎ!」「こんなにお母さんは優しそうじゃないけど」という家族からの鋭い指摘の数々が。
あいたたた。(>_<)
ただ一つだけ、気になることがありました。文章の後に、生徒達に考えてもらう質問が載っているのですが、たまたまこういう質問が。
■このお母さんは人間にとって「一番大切なこと」は何だと思っているだろうか。
うーん、これ、私自身がうまく表現できなかったのです。当てられたら多分答えられないぞ!生徒達が出した答えに対して先生が「それは違う」「正解」とかおっしゃるのでしょうが、果たして何をもって判断なさるのかな?
以前大江健三郎さんだったか、国語の教科書に作品が載り、「この作者の言いたかったことは何か」という設問の模範解答がまったく自分の思いとはかけ離れていてびっくりした、というお話を伺ったことがあります。
ちなみにこの質問の次は
■あなたは「人間にとって一番大切なこと」は何だと思うか。話し合ってみよう。
うん、これ一緒に話し合ってみたいなあ。どんな答えが出るのかな?ちょっと、授業を覗いてみたいですね。(^_^)
でも教科書に文章が採用されるなんて二度とないことですから、本当に感謝しています。 この教科書は永久保存版として記念に、大事に取っておきます!
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